前回は中国で主に利用されているインターネットサービスとして“チャット”微信(ウェイシン/wechat)と“マイクロブログサービス”微博(ウェイボー/weibo)を紹介しました。今回も引き続き中国で主に利用されているサービスである”オンラインショッピング“淘宝網(タオバオワン)について紹介します。
目次
世界一のネットショッピング大国は中国
中国と日本のオンラインショッピングの違いとは?
中国と日本の大きな違いとして、一つは中国の国土の広さがあげられます。国土が広いゆえに、例えば国内で欲しい商品を見つけても、リアルな店舗は数千キロ離れた遥か彼方・・・、もしくは逆に自分の商品を売りたいのだけど田舎に住んでいて買い手が見つからない。インターネットが普及する以前はそういったことが問題となっていました。
しかし、近年のインターネットサービスの普及により“オンラインショッピング”が急成長したことによりその問題が解決し、中国全体のインターネット人口の48.9%である約3億人がオンラインショッピングを利用するようになりました。(図1の①参照)
それともう一つはオンラインショッピングのシステムの違いです。
日本のオンラインショッピングでは決済方法がたくさんあります。例えばオンライン上であれば「クレジットカード払い」「オンラインバンキング決済」など、直接的支払い方法であれば「コンビニ決済」「銀行振込」「代金引換払い」といったように色々など。様々な決済方法を選べることが多いです。
しかし中国のオンラインショッピングは決済方法が少ないです。決済方法で基本的に使われるのがオンライン決済サービス“支付宝(アリペイ)”です。(図1の②参照)そのオンライン決済サービスを使用するのには中国の“インターネットバンキング“も必要となってきます 。(図1の③参照)
日本では支払い方法が多いのでインターネットバンキングの利用率が低い(図2の②参照)ですが、中国ではオンラインショッピングを行う場合、”オンライン決済+インターネットバンキング”が必ずセットになって使われます。
今回の記事では世界でも有名なショッピングサイト“淘宝(タオバオ)”とそこで使われるオンライン決済サービス“支付宝(アリペイ)”、そして中国の“インターネットバンキング”を中心に書いていこうと思います。
中国の“淘宝(タオバオ)”は複数のインターネットサービスが複合した世界一巨大なオンラインショッピングサイト
中国だけではなく世界的にも有名なオンラインショッピングサイト“淘宝(タオバオ)”は、C to C、B to Cのサービスもあり、メインで利用されているC to Cサービスは数千キロ離れているユーザー同士でも簡単に商品の売買をすることができます。日本のサービスに例えると一番近いのは“ヤフオク”のような感じです。個人が商品を出品して個人が品物を買うという流れです。
そしてここで重要なのが単にインターネット上に商品を掲載して商品を売っているわけではないというところです。中国ならではの文化がインターネットサービスでも利用されています。中国は日本とは違いクレジットカード(VISA、Master、アメックス等)が使えるところがとても少ないです。なのでクレジットカードを持っている人も少ないし、基本的には現金払いというのが原則です。そのためオンラインショッピングでもクレジットカードを使うことは少ないです。1
そこで利用されるのがオンライン決済サービス“支付宝(アリペイ)”です。数千キロ離れているユーザー同士が直接現金のやり取りをすることは物理的に不可能です。支付宝(アリペイ)は中国の文化をうまくシステムに取り入れた画期的なオンライン決済サービスです。日本でもオンライン決済サービスとしてはクレジットカード決済やインターネットバンキングを利用したサービス等が使われていますが、もしも詐欺被害(売り手・買い手双方)にあった場合は警察への連絡、もしくは泣き寝入りするしかないということもよくあります。日本人はある程度信頼できるだろうと思われる相手ならば、売り手の場合は商品提供した後に代金を回収する。買い手の場合はクレジットカード等で金を支払い商品が届くのを待つ。そういったことは普通です。
しかし中国ではそうはいきません。“現金払いで直接商品を受け取る以外の方法では騙される可能性がある“だから先に商品を送るのも不安、先にお金を払うのも不安。日本の方式だと、どちらもリスクを恐れて売買が成立できません。なので支付宝(アリペイ)は特別な決済システムを作り解決しました。
支付宝(アリペイ)はアメリカのeBay(イーベイ)の決済処理で使われている“PayPalペイパル”に似ていて、オンライン上のお財布的な感じのサービスです。なので、インターネットバンキングやコンビニなどを使って支付宝(アリペイ)にチャージし、ショッピングに利用するというような流れでしようします。
淘宝(タオバオ)と支付宝(アリペイ)とインターネットバンキングの連携
これまでの記事では淘宝(タオバオ)と支付宝(アリペイ)の概要を説明しましたが、
次は、これらのサービスがどういった感じで実際に連携しているのか、どうやってユーザーがこれらのサービスを利用しているのかを具体的に説明していきます。図3が中国のオンラインショッピングの仕組みを表した図です。(図3参照)図には①~⑨の番号が振ってありますが、この番号は商品の売買が完了するまでの順番になっています。
もし日本の“ヤフオク”で商品の売買を行うならば、①②の後に出品者と購入者が直接金銭のやり取りをし行い、最後に商品の発送を行えば売買が成立します。
しかし中国の“淘宝(タオバオ)”で商品の売買を行うためには“支付宝(アリペイ)”と“インターネットバンキング”を使用することがほとんどの場合で必要となってきます。(最近はクレジットカード払いも使用できるようになりましたが、中国の銀行で作ったクレジットカードしか使用できません。)
ここからは“図3”の番号順に説明していきます。
淘宝(タオバオ)での商品売買の流れ
②次に購入したい商品をカートへいれます・・・と言いたいところですが、淘宝(タオバオ)では売り切れている商品が自動的に売り切れと表示されないため、実際には無い商品も掲載されていることがあります。なのでまずは品物の在庫の確認や発送できる時期などを出品者とチャットで質問するところから始まることが多いです。なので商品ページには必ずチャットボタンが付いていて、オンラインorオフラインなのかも一目で分かるようになっています。
チャットボタンをクリックすると、“阿里旺旺(アリワンワン)”という淘宝(タオバオ)専用のチャットアプリをが立ち上がります。ここで出品者とリアルタイムでの商品についての確認を行います。(図4参照)
③、④商品の確認を行ったら、商品をカートに入れて購入の処理を行います。この時に決済方法を決めます。支付宝(アリペイ)での支払いが主流ですが、最近はクレジットカードでの支払いもできるようになりました。ただしクレジットカードは出品者・購入者共に3%の手数料が発生2 してしまうのであまり使用されません。ちなみに支付宝(アリペイ)は出品者購入者共に手数料無料です。
淘宝(タオバオ)の主な収益は広告収入とBtoCサイト“淘宝天猫(TMALL)“で出店する企業からの収益となっています。広告なしでCtoCサイトを使うのであれば手数料は無料で売買が済んでしまいます。⑤支付宝(アリペイ)へ支払いの処理を依頼すると、購入者が支払った電子マネーをいったん支付宝(アリペイ)が預かります。この時にもし支付宝(アリペイ)に入っている金額が足りなければインターネットバンキングやコンビニから支付宝(アリペイ)へチャージします。
⑥そして支付宝(アリペイ)から出品者へ電子マネーを預かった旨の連絡が送られます。
⑦支付宝(アリペイ)から連絡を受けた出品者は、購入者へ商品を送ります。
⑧購入者は商品が届いたら支付宝(アリペイ)へ商品が届いた旨を連絡します。
⑨支付宝(アリペイ)は購入者から商品が届いた連絡を受けた後に、購入者から預かっていた電子マネーを出品者に支払います。
このような流れで淘宝(タオバオ)での商品の売買が行われます。
もし⑧の時に商品が届かなかったり破損していた場合はどうなるの?と思われるかもしれませんが、もし商品が届かなかったり破損していた場合は、出品者と購入者が直接話し合うのではなく(直接の場合もありますが)、基本的には淘宝(タオバオ)のサポートセンターがクレームの仲介役となり、代金の返却や割引などの処理を支付宝(アリペイ)を使って行うことができます。
中国では生産者よりも消費者が絶対的に守られる仕組みになっています。
出品者が支付宝(アリペイ)からお金を受け取る為には実名登録が必要となります。実名登録には“居民身分証”が必要なので、悪いことをすればすぐに犯人が分かるようになっています。さらに出品者は初めて出品をするときに1,000RMB(人民元)の預り金を淘宝(タオバオ)に支払う必要があります。もし出品者が購入者に弁償金を払えない場合は、淘宝(タオバオ)の判断により、預り金から淘宝が購入者に弁償金を支払うことになります。なので、出品者は消費者からのクレームには誠意を持って対応する必要があります。
オンラインショッピングの決済方法については、日本より中国の方が面倒な感じですが、
売買取引の安全性については日本より中国の方が進んでいるといった感じです。
以上が“オンラインショッピング”と“オンライン決済”の仕組みです。
中国と日本では文化の違いによって、オンラインショッピングの仕組みも大きな違いがあることが分かっていただけたと思います。
次回は中国の“動画配信サイト”と“音楽配信サイト“について紹介していきます。
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